カスタマーエクスペリエンス向上は白昼夢からは生まれない〜6社のトップが語るポイント

2016-04-13

カスタマー・エクスペリエンス(CX)は様々な文脈で語られますが、セールスとマーケティングの中でも重要な存在です。なぜなら、カスタマー・エクスペリエンスの向上は、営業コスト削減利益アップのために有効だからです。

例えば、顧客満足度が上がれば

  • 一人のお客さまが生涯落としてくれる利益の向上(LTVアップ)
  • 満足度が高い事自体も強力なセールスメッセージに
  • 足してくれた人は他のお客さまを連れて来てくれる

といった結果につながります。1人の新規顧客を開拓するより、1人の離れていくお客さんを引き止めなければなりません、競争の激しい業界の中で勝ち残るためには。

いかにお客さんを逃さないか、逃さないというと無理やりなイメージが有りますね、そうではなくて「居続けてもらえるか」を突き詰めることが商売において今とても重要です。

ではどうすればいいのでしょうか?

今回、そのポイントについて、ユーザーテストサービスを提供している「UserTesting社」のブログから、以下の記事のエッセンスをご紹介します。

7Customer Experience Lessons I Learned from the Smartest Minds in the Industry | UserTesting Blog)
https://www.usertesting.com/blog/2016/01/18/customer-experience-lessons-learned/

決して簡単なことではありませんが、この意識を持った企業というのは少なくとも1年後には大きく変わっているのです。

概要:7つのポイント

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まず大見出しとしての7つの項目です。

UserTesting社がインタビューした会社が7社だったので7つになっています

  1. カスタマー・エクスペリエンスの向上は甘い考えでは難しい
  2. 最上の顧客を、アンバサダーにする(若干意訳)
  3. お客さまが望む結果を理解すること
  4. 定性的・定量的両方のデータを見ること
  5. ネットプロモーターズスコア(NPS)などを使って量的な計測をすること
  6. (徹底的に)お客さんの立場になること
  7. 素晴らしいカスタマー・エクスペリエンスは「共感」と「思いやり」から

まとめると「全社戦略である」「お客様目線」「データ解析」でしょうか。

※7つめはUserTesting社のVPによるまとめなのでこの後では省略します。

1.カスタマー・エクスペリエンスの向上は甘い考えでは難しい

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私としてはここが最も大きいと思っています。

カスタマー・エクスペリエンスや顧客満足度というものは、「みんなお客さんのためになって仕事をしようね」「笑顔を大事にしようね」といった精神論や個人個人任せの意識づけから入り、そこで終わりになってしまいがちです。

しかし、元記事ではForrester社のKerry Bodine氏とMoira Dorsey氏の言葉として、こう述べられています。

甘い考えでは、優れた満足感を顧客や見込み客に与えるには不十分だということを学びました。効果的に顧客満足を改善する唯一の方法は、顧客に奉仕するにあたり体系的に行動し、企業規模の取り組みを作り出すことです。

また、

物事を具体的にし、計測可能な改善を行うなら、あなたは経営幹部レベルの人間と一緒にプロジェクトを行う必要がある。そして社員全員がカスタマー・エクスペリエンスを理解し、自分のものにしなければならない。そして、優れたCXを提供した社員にはインセンティブが支払われ、CX向上戦略のドキュメントが作られていくようにしなければならない。

とも。仕組みが必要だと、それくらいしないと浸透しない、人を動かすことはできないということです。

企業規模が大きければ大きいほど、タスクとしての難しさは上がるでしょう、意思疎通をはかるチャネルを構築するところからのスタートかもしれません。

しかし、これくらいの気持ちでやらないと、成功はしないということです。

また、費用の出処については広告費に入れるのがいいのではと述べられています。

そしてもしこれらの取り組みに必要な予算をどこから捻出したらよいかわからない場合は、広告費の予算からいくらか割り当てることも考えましょう。

広告費から出すというのはロジカルには正しいですが、カスタマー・エクスペリエンスというぼやっとしたものに対して、具体性がある広告費の中に混ぜ込むことは、まだ難しいかもしれませんね。

2.最上の顧客を、アンバサダーにする

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これはBain & Companyの幹部によるものです。

端的には「最も利益が上がっている顧客を重点的に扱おう」ということです。

原文でも注意書きがありますが、これは決して「大した利益にならない顧客は無視しろ」ということではありません

そうではなく、あなたのサービスや商品を大好きな人に着目して、深い洞察を得て、それをもとに市場は何を求めているのか、なにか改善できることはないか、という形でフィードバックしていこう、ということです。

これは(中略)もっとも期待できる顧客、つまりあなたの企業を一番愛してくれている顧客との関係に焦点を絞り、最近効果のあったものは何か、顧客のために改善できることは何かという洞察を集めるということです。

さらに、その結果として、対象顧客はさらにあなたのファンになってくれて、他の人に商品やサービスを紹介してくれます。ここももちろん重要です。

ロイヤルカスタマーとのチャネルを確保し、たくさんの顧客目線の情報を得ることは、自らが顧客目線になること以上に気づきがあります。

3.顧客が望む結果を理解する

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Gainsight社のLincoln Murphy氏によるものです。

基本的には「ドリルが欲しいのではなく穴がほしい」的な話なので割愛します。

ニーズやウォンツはユーザーが意識していない潜在的無意識の中にあるケースも多いので、こちらで理解してコンテンツを通じて気づかせることが必要ですし、きっと発見してあげること自体が価値になるでしょう。

また、それとは別にここで印象的だったのは、決して体験は「素晴らしい」ものでなくても良いという下りです。

そしてそれは、ふさわしい、妥当な経験がどこで作用し始めるかということでもあります。ここで重要なのは、必ずしも「すばらしい」経験を与えることではなく、顧客の期待と一致する経験なのです。

カスタマー・エクスペリエンスというと、取り上げられるニュースや記事は「すごい体験」「感動的な何か」というものが多いので、敷居高く感じてしまうケースが多いように思います。ただ、それはメディアとしてネタにするにはそういうモノのほうが反応が良いという事情があります。

実際、「すごい体験」「感動的な何か」は経験的に思いますが、爆発力はあっても、保持力はありません。話題になって終わりです。

そこからいかにそのレベルをキープしていくかが重要です。また、キープすればするほど、お客さまの期待値は上がっていくので、投資する費用も増えていきます。

リソースのある企業ならそこを目指してもいいと思いますが、迂闊にやるのは危険だと思っています。

それよりは「これくらいは普通あるだろう」という適切かつ「ふさわしい」体験をもれなく提供すること。相手に足切りに合わないようなレベルのものを、提供し続けること、そこをまずは目指したほうが良いと思うんですね。

そう思っていたので先ほどのLincoln Murphy氏の「顧客の期待と一致する経験が大事」というのは、私は腹に落ちています。ニュースはニュース、実際の商売はもっと泥臭いです。

4.定性的、定量的なデータ両方を見る(+5のネットプロモーターズスコア)

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これはGoogleのデジタルマーケティングエバンジェリストAvinash Kaushik氏のコメントです。ネットプロモーターズスコアはMatrix Partnersのジェネラル・パートナーDavid Skok氏のコメントです。

前提としてざっくりと…

  • 定量的なデータ:Googleアナリティクスなどに散らばっている、数字で表せるデータ
  • 定性的なデータ:数値で表せないデータ(なんでこれが好きなのか、なぜここで去ったのかなど)

定性的なデータも、アンケートの取り方を工夫するなどして定量的なデータに変えることができます。比較のためにはできるだけ定量的なデータにしたいので、定性的なデータも定量化できるようにしていくことは重要です。(セミナーアンケートの満足度を自由記入欄だけではなく点数もつけてもらうなどが身近な例でしょうか)

5番目のネットプロモーターズスコアがまさにその辺りをついています(なので項目としてまとめました)

定量的なデータと定性的なデータ、概してどちらかに偏った分析をしがちですが、基本「両方必要」だと考えることをお勧めしたいです。

Googleアナリティクスだけで全部わかるなんてことはありませんし、ユーザーテストやヒートマップだけで全部わかるなんていうこともありません。

6.顧客の立場になる

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これはIDEOの最高顧客責任者(CCO)Paul Bennett氏のコメントです。

コメントの中で「考える」という領域ではなく、まさに顧客体験をすることを勧めています

この「お客さま体験」というのはサービス提供会社なら、簡単に行えて気付きが多いものです。この季節、いい意味で真っ白な新入社員の方も多いと思いますので、行ってはいかがでしょうか。

この記事では、医療の現場における、患者の快適性向上の話が出てきます。

抜粋すると

  1. IDEOのチームは彼ら自身を患者の立場に置くことから始めた
  2. 具体的にはまず、メンバーの一人を病院のベッドの上に寝かせ、患者に見立てた
  3. 結果、改善のために今まで完全に見逃されていたことを見つけた(詳細は述べられていません)
  4. 天井に設置されたカメラで撮影した6分間の動画を見せ、一日中ベッドに横たわり、長い時間を天井を見つめて過ごす患者の気持ちを病院に理解させた

ということを行ったそうです。

頭の中だけでお客さまの視点になるのは、すぐには難しいかもしれません。ならば、実際にお客さまになってしまう、物理的に身体をそのような状況においてしまう、これは有効な手段です。

競争の厳しい市場ほど、追求すべきはカスタマー・エクスペリエンス

以上6つのコメントをご紹介しました。宜しければ元記事もご覧ください。

「業界トップから学んだ7つの顧客満足体験レッスン | UserTesting Blog」
(7 Customer Experience Lessons I Learned from the Smartest Minds in the Industry | UserTesting Blog)
https://www.usertesting.com/blog/2016/01/18/customer-experience-lessons-learned/

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サービスの強さというのは大きく「初回客を引き込む強さ」「既存客に居続けてもらう強さ」があると思います。

この後者に対して非常に重要なのがCXだと思っています。

昔、郵送版コンサル無料情報誌サービスの品質は解約率で測ると良いと書きました。

これはあくまでサービスを選ぶ側、買い手側としてお伝えしたものではありますが、売り手にもぜひ知って頂きたいポイントです。

集客はゴリ押しでもある程度いけますが、満足度に繋がるカスタマー・エクスペリエンスは簡単に改善できませんね、自社の利益だけを考えるような企業にとっては特に。

なので自社の解約率が高いなら、それは「自分たちのサービスは申込者の役に立っていると思い込んでいるだけ」かもしれません。喜びの声があったとしても、その裏に語られない「悲しみの声」が10倍も100倍もあるかもしれません。

競争が激しい業界ほど、カスタマー・エクスペリエンスを追求して、お客さんに心地よく居続けてもらい、サービスや商品を使ってもらって、安定した収益を確保しよりよいサービスや体験を提供する原資にする。そういった共存共栄の考え方が必要です。

この記事が、お役に立てば幸いです。

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