ホーム » podcasts » 経営者・社長向け » 第184回:2019年版中小企業白書をツールとして使うと視点と環境が変わる(前編)

今回の内容について

2019年版中小企業白書を ツールとして使うことで 視点と環境が変わる(前編)4月26日付で経済産業省・中小企業庁から小規模事業白書と中小企業白書の2019年版が出ました。PDFで全文閲覧できます。

前回のポッドキャストでその概要部分とまずは押さえておいて頂きたい部分についてWebの観点を中心にお届け致しました。

今回はそれぞれの章ごとの内容について、ウェブとその先の事業そのものについて知って頂きたい、そして考えて頂きたい部分についてまとめています。

今回はその前編です。

エピソード詳細

今回扱うテーマは中小企業白書です。

前回は、中小企業白書の概要についてお送りしました。できれば、まず前回のPodcastを先に聞いていただきたいです。一つ前の回は20分ぐらいでお送りしているので、ぜひ概要について聞いていただければと思います。

今回は、この続きをやります。

事業者が中小企業白書を読んでおくべき理由

そもそも中小企業白書を、なぜ、事業者の皆さん自身が把握していなければならないのかというところですね。よく聞かれる部分でもあります。

これは、細かい内容とか数字をちゃんと把握していないと経営ができないとか、営業とか販促の面でもお客さんの環境を知っていないといけないですよとか、そういうことではないですね。

そこまで知っている必要は、ないです。

知っていたところで応用はなかなか難しいですね。なんでかというと、これはあくまで統計であって、個別の具体的な情報はあまり多くはありません。

事例などはありますけれども、やはり厳選された成功事例です。

そういうところではなくて、会社組織そのものを俯瞰するタイミングとして使っていただきたいなと考えています。ツールとして使っていただきたいなというところです。

目先に囚われず俯瞰するためのツールとして

私自身も中小企業の一つで、大企業では全くないです。そこで感じることですが、目の前のことに没頭していると、先のことや、それから自分が今行っていることが果たして正しい努力なのか、これをやっていればいいのかというところに、目が向かなくなってしまうことが多いんですね。

それは、がむしゃらにやっていることによる安心感、少なくとも今、自分が売上を作っているんだという安心感もあるでしょう。

あるいは、小さい企業や中小企業でお仕事をなさってる方々は、本当にその仕事が好きっていうケースも多いんです。

そうすると手を動かしていること自体が、とても楽しいんですね。

とはいえ、会社経営をするとか、あるいは経営陣に加わるということを考えると、Web 云々に関わらず、やはり全体というものを見据えて、自分を見下ろしながら目の前の仕事というものに向き合うというスタンスを取っていただかないと、なかなか先が見えてこないんですね。

その時に「じゃあそうしましょう」というだけだと、なかなか習慣化していきません。

なのでいろんなツールを使ったり、ブレストをするとか、いろいろなやり方があると思います。そのなかで、年に1回出るこの中小企業白書や小規模事業白書を見ることも、それに繋がります。

今回のPodcastが、そのきっかけになればいいなと思っています。

私もそういう目線で見ています。また、支援する立場なので、また色んな目線で見てはいるんですけれども、自分の事業もやはり重要ですし、そこからのフィードバックで皆さんの商売をお助けしている部分もあります。

というところで、今回は「ざっくりとここを押さえておいてくださいね」というところをお伝えします。

なので、なんかつまらなそうだなと思わずに、興味をもって聞いて頂けると嬉しいです。

Webの活用は商売の土台ができていてこそ

あとは、「Web の話を聞きたかったのに」という方もいらっしゃるかもしれないですね。

Web を活用できるかどうかは、Web 単体で考えていても、あまり成功しないです。

これは経験上そうなんですけれども 、商売そのものがきちんとできている、土台としててきている上で、それをうまくブーストアップしていくのが Web の役割だというふうに考えていただきたいんです。

それは、純EC、純 Web 上の存在である EC ショップなども同じです。

そのECを運営している会社組織自体が、いったい今どういうことを強い武器にしていくのか、これから何を作っていくのか、そしてそのためにどういう人を集めて、何を社会に対して供給していくのか。

そういったところがしっかりしていないと、Webであろうが、Webでなかろうが、なかなかこれからの社会では、やっていけません。

それは中小企業白書の第3章にある「構造の変化」という部分にも出てきます。再度そこでリフレインできればと思うんですけれども、ちゃんと自分の事業がしっかりしていないと、Webの活用なんてできるわけがありません。

Web を使ったから突然魔法が使えるとか、敵が一発で倒せる裏技があるとか、そういうことでは全くないんです。

そのところを認識いただけると良いかなと思います。

2019年度版中小企業白書のポイントまとめ

購入もできますが、中小企業庁で章ごとにPDFがアップされています。

中小企業庁:2019年版「中小企業白書」全文
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/2019_pdf_mokujityuu.htm

第一部で中小企業の動向、第二部で事業承継の世代交代、第三部で実行変革・今の時代にどう対応していくのかがまとまっています。

全部読もうと思うと300~400Pあるので大変です。私も全部は読んでいませんので、気にする必要はありません。章単位でPDFに分かれていますが、最後にまとめが付いているので、まずはそこを読むと良いかと思います。今回もまとめを追いかけながらお送りしていきます。

第一章:中小企業の動向

P22に第三節のまとめがあります。全体として回復基調を維持していて、資金繰りも回復傾向にあり、経常も過去最高水準を維持しているのが全体の状況です。倒産件数も減少を続けていて、改善傾向があるとのことです。

一方で、設備投資に関わる部分がどうも伸び悩んでいるようです。主に製造業や物流になると思いますが、設備がだんだん古くなっているけれどなかなか更新できていない状況です。大企業は新しいものをどんどん導入していますが、中小企業はなかなか新しい投資ができていません。

自社はどうも良くなっている気がしないという場合は、同業他社がどうなのかを強めにリサーチすることをお勧めします。

業界や地域として全体的に良くなっていない場合には、当然そういう状況もあり得ます。人口が減少しているのでお客様が全体的に減っていて、少ない業者さんの中でお客様の取り合いになっている。

顧客獲得単価が上がっていき、それにより全体の利益が圧迫されているという状況も十分考えられます。そうであれば、今いるところから一人勝ちしていく方向で頑張るのか、あるいは何か違うフロンティアを探していくのかを考える必要があります。

そうではなく、他は皆景気が良いのに自社だけ悪いという場合には、何か大きなお客様の考えの変化があったり、気づかぬうちに周りが数歩前に進んでいて取り残されていたりということも考えられます。

そもそも自社がおかしいのかどうかも分からないという場合もあるので、数字をしっかりと見て周りと比較することをお勧めします。

第二章:中小企業の構造分析

ここでは開廃業の話や従業員数の変化についてまとまっています。こちらも第三節にまとめがあるのでご覧ください。開廃業については、もちろん企業数は減っています。開廃業が企業数の変化に与える影響については、小規模起業の廃業数が開業数を倍近く上回ったため、減っているということです。その関係で従業員数が減っています。

付加価値については、ある計算式で計算しています。当然存続している起業が付加価値を伸ばすことで、全体の付加価値額を上げています。付加価値額を上げられているところが存続できているわけなので、当然の話ではあります。ここで注目してほしいのは、付加価値を持っているにも関わらず後継者がいないせいで廃業している会社が多いという点です。

自社の事業の役に立つ、埋もれてしまう経営資源をうまく拾っていくという選択肢は求められていますし、従業員ごと、技術ごと取り込んでしまうというやり方は、十分検討に値するものだと思います。

そのあたりは国のほうでも力を入れていますし、民間でもサポートしてくれるサービスはあります。自社で人材育成をしたり、新しいサービスを伸ばしていきたいけれど先が長いなという時には、他の企業を取り込むという選択肢も一つ入れられる状況になっているのかと思います。これは数年続いていくでしょう。

最終的においしいと言ってはなんですが、良い統合先はどんどんなくなっていくので、事業をこの先膨らませていきたい場合には、そういう選択肢もあるということをこの章で押さえていただければと思います。

埋もれる技術はもったいないものが多いので、自分たちのところでもっと育てられるのであれば積極的に拾うことは、投資対効果が非常に高いケースが多いと思います。なので余裕のある、或いは新しい幹を伸ばしたいという場合には、十分選択肢としてアリだと思います。

財務データから見た中小企業の実態

その次は、財務データから見た中小企業の実態です。ここはあまり気にする必要がないので飛ばします。次は、皆さん差し迫った問題ではなかと思われる人手不足です。その中で労働生産性の話が出てきます。

そもそも供給される労働力が少子高齢化によって減っていくのは確実です。海外から一部の労働者を呼ぶということも今進んではいますが、急にそれが浸透するとは考えづらいです。そうすると、これからお客さんも働き手もどんどん減っていくという前提で動かなければいけません。

「結局人が集まらないのはお金の問題ではないのか?」という話がちょくちょく出てきますが、たぶんそんなことはありません。

一部の企業が結構な価格でバイトを集めたら沢山集まるという話も出てくるのですが、それは一過性かつボリュームが少ないからなので、それが何かの解になっているとは私は思いません。

会社としてこれまでがむしゃらにやって売り上げを作ってきて、その成長、団結、人間関係で組織が結びついていたという状況がありました。今の時代は働き手が手に入れられる情報の範囲がこの5~10年で爆発的に広がっています。

昔なら身の回りや人づての情報、紙の情報、媒体によって判断するしかなかったので、その中で価値観を作ってという話だったと思います。今は良くも悪くも、情報の正しさも含めていろいろと問題はありますが、海外や日本各地の情報が流れ込んでくるので、その人にとって都合の良い情報が入ってきます。

その中で一つの組織として従業員をつなぎとめておくことが必要になってきてしまいました。重力みたいなものが解放されていってしまっているので、組織はどうしても求心力が必要になってきています。

皆で一つの方向に足並みをそろえる

お金や福利厚生で結びつけるのはもちろん一つの手段ではありますが、やはり皆で一つの方向に足並みをそろえることを考えると、ビジョンや未来に向けたことについてきちんと外に向けて情報発信していくことが必要になります。もちろん中に対しても定期的に伝えていく必要があるし、それに沿った企業活動が必要な時代だと考えたほうが良いです。

そういうものがないと、ブランドがない状態と同じで、早い・安い・旨いところに消費者は流れていってしまうのと同じようになります。高い・労働条件が良い・人に自慢できるところに流れていってしまうわけです。

でもそういう動機で集まった人が、そのまま何のエデュケーションも受けていない状態で企業として足並みをそろえていくのは難しいので、その先に教育のプロセスがあれば良いのですが、あまりそのように人を集めても良いお客様が集まらないのと同じように、良い従業員が集まらないと思います。

会社の求心力を上げていかなければいけない

このタイミングに皆さんの会社の求心力を上げていかなければいけないというのが、私が裏の趣旨として感じる部分です。大企業はまだ人余りの状況ではありますが、中小企業の方々はいろいろなところに出店してもなかなか人が採れないと言われています。

その中で当社でもオーダーが増えているのは、求人系のサイト作成や、コーポレートサイトをサービスサイトと別にきちんと作りたいというケースです。やはりそれも、きちんと経営者や従業員の方の協力を元にしっかりと作っていけば、それを見て応募してくれる方はいます。

通年採用をしていく、これから終身雇用はどうなのかという話題も出てきていますが、中途でもいろいろな人に来てもらい定着してもらうためには、ミスマッチを防ぐためには、その後のトラブルを防ぐためには、私たちはこういうものですよということをきちんと考え抜いて出していくことです。

そしてそれをブラッシュアップしていくことが非常に重要な時代に入っていると考えるべきです。今一番楽なのは、WEB上で発信していくことです。そういう企業は、買い手からも支持されますからね。そのあたりを考えていただければと思います。


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中山 陽平

Web活用を本気で頑張りたい企業の成功とノウハウ蓄積を支援。小さな企業専門の伴奏支援。戦略立案から実行提案・診断・HP制作などを提供。無制限全国対応のアドバイザリ・顧問や嫌な営業対応代行など一気通貫で外部の専門家としてお守り。2001年に業界に入り支援経験600社以上。技術評論社から書籍出版、WebセミナーPodcastは月間1万ダウンロード。

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